王様のブランチで紹介された作家のインタビューをまとめて掲載しています。
インタビュー
丸山さん:
暗い内容、しんどい部分がたくさんあると思うけど、なんとかそこを乗りこえて読んでいただければ、主人公と一緒にその先に開けるものがあるんじゃないかって。
―――正義ってなんだろう?と自問自答しながら、考えさせられる一冊でした。
―――いきなり衝撃の展開。万引き犯を殺してしまう。
丸山さん:
万引きされた段階では被害者だったのが、暴行して死に至らしめたことで加害者になってしまう。関係性が逆転することは、誰の身も起こり得ることではないか。万引きを憎む気持ちは正しいこと。ただその「正しさ」があまりにも歪んだ正義感になって人を追い詰めることもある。その結果、自分に返ってくる。どこまでこの男が転落していくんだろうって。
(さらに加わるもう一人の話が)別の話として最初は考えていたけど、共通するものがある。「不寛容」「自己責任」。この二つがテーマとして浮かんできた。
―――二人が出会った時に、どういう気持ちになるのかな?ていう....。「混ぜるな危険」なんじゃないかなと思った。
丸山さん:
読んでいる人には先が読めない展開って思っていただける。私自身がまったく先が読めず、ストーリーを考えずに書いているので、最終的には二人はどうなるんだろう?という面白さはあるんじゃないかと。
人は誰でも罪を犯す存在。だけど自分の強い思いと支えがあればやり直すことができる。そこには周囲の寛容さだったり、自己責任として放ってしまうのではなくて、社会全体で支えていくような考え方が、自分を含めてできればいいなというのが一番思っていることです。
* 過去の過ちに翻弄されながらも支え合い、立ち上がる姿に希望をもらえる一冊です。
丸山正樹プロフィール
1961年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。シナリオライターとして活躍の後、松本清張賞に応募した『デフ・ヴォイス』で、作家デビュー。2021年『ワンダフル・ライフ』で読者メーター OF THE YEAR 2021に選ばれる。22年『龍の耳を君に』が第17回酒飲み書店員大賞を受賞
ひとこと
作者自体が先が読めずに書き進めているってことがまずすごい。展開もすごそうですが、内容的にもすごくハードそう。「正義」をもってしたことが、それが人生の転落のもとになってしまうなんて。「不寛容」「自己責任」、この二つのテーマを常に突きつけられる読書になるでしょう。じっくり読んでみたいと思える作品でした。それでは、また来週。
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