王様のブランチ・BOOKコーナーで紹介された本を紹介します。
透明になれなかった僕たちのために:佐野徹夜
インタビュー
佐野さん:
僕自身が人間として作家として人生とか生きることを描きたい。それを最大限込めた作品になったんだなぁと思います。
―――物語の中で「この話に出てくる人たちはみんな嘘をついていた」と書かれている。これはどういった意図で?
佐野さん:
それを予告することで誰がどういう嘘をついているのかと疑いながら、疑心暗鬼な気持ちで読んで欲しい。主人公が疑心暗鬼な人。人を信用できないところがあるので、それをちょっと投げかけることで読者も主人公とシンクロできるようにっていうような。
―――ひとつの点からどんどん連鎖して、真実に辿り着いた時には、凄くドキドキして、その考えが納得できる部分があって、そこが自分でも怖くて。すごい読書体験をさせてもらったと感じました。
佐野さん:
人生は生まれた時点である程度決まっているのか、シリアスなテーマを沢山入れ込んだと思うんですけど、読んでいくうちに何かすごく身近な、もしかしたら自分もそうなってもおかしくないし、自分のことのように考えられる作品になっていたら嬉しい。
ラストシーンが、解決したのかしていないのか、色々なことに決着がついた。現実は生きることの価値のある世界だということをすごく伝えたかった。それを押し付けたいという気持ちは全然ないですけど、もし読んでそういう風に感じてもらえたらすごく嬉しいなとは思っています。
―――ラストに希望が見えて、それがあったからこそ自分の中で抱えていたマイナスな部分が救われたような気持になりました。
佐野さん:
そう言っていただけると、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
*生きる意味を問う青春サスペンスですの傑作です。
ひとこと
「疑心暗鬼な気持ちで読むことを前提として」っていうのが、何か佐野さんからの挑戦状のような感じですね!これは大変だ~。ちょっと重く怖そうな展開ですが、読み出したら止まらない小説なんだろうなあ...と感じました。どこまで嘘を見破られるか?チャレンジですね。装丁、美しいーーー。それでは、また来週。
佐野徹夜プロフィール
1987(昭和62)年、京都府生れ。同志社大学卒。2017(平成29)年、『君は月夜に光り輝く』で電撃小説大賞を受賞し、デビュー。同作は2019年に映画化され、大ベストセラーとなる。近年、『文藝』で短編を発表するなど、創作の幅を広げている。他の著書に『アオハル・ポイント』などがある。(新潮社・著者プロフィールより)