王様のブランチ・BOOKコーナーで紹介された本を紹介します。
わたしたちに翼はいらない:寺地はるな
内容
他人を殺す。自分を殺す。どちらにしても、その一歩を踏み出すのは、意外とたやすい。それでも「生きる」ために必要な、救済と再生をもたらす、最旬の注目度No.1作家・寺地はるなのサスペンス
同じ地方都市に生まれ育ち現在もそこに暮らしている三人。4歳の娘を育てるシングルマザー――朱音。朱音と同じ保育園に娘を預ける専業主婦――莉子。マンション管理会社勤務の独身――園田。いじめ、モラハラ夫、母親の支配。心の傷は、恨みとなり、やがて……。(Amazonより)
寺地はるなプロフィール
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。2020年『夜が暗いとはかぎらない』で第33回山本周五郎賞候補。2021年『水を縫う』で第42回吉川英治文学新人賞候補。同年同作で第9回河合隼雄物語賞受賞。『川のほとりに立つ者は』で2023年本屋大賞9位入賞。他の作品に『カレーの時間』『白ゆき紅ばら』などがある。(新潮社・著者プロフィールより)
インタビュー
寺地さん:
人生の本の数年間ですよね。中学とか高校とか。でも一生影響を及ぼすくらいすごい期間だなぁと思う。良くも悪くも忘れられないものなのかなって。
―――園田が「あいつを殺してから死のう」というシ―ンを執筆するとき、どんな思いいでしたか?
寺地さん:
それに近いことが私も何度かありました。死にたいって言っているけど、死にたくない。自分の言葉や行動が自分の感情を裏切る感じは、誰にも覚えがあるんじゃないかなーって思うのですけど。
―――私もいじめを受けたことがあって、園田とすごい近い思いになった。同じ気持ちになっている人が本の中にいるのはすごく救われる。
過去のトラウマ、家庭の問題、人間関係、様々なテーマが絡み合う今作、一番軸にしたかったものは?
寺地さん:
ひと言でいえば「許せないことは、許さなくてもいい」
―――許すって結構苦しいことでもありますものね。
寺地さん:
「終わったことは水に流す」というが、それってとても大変だし、傷ついた側が苦労しなきゃいけないのは、とても辛いこと。だから許さなくてもいいよということを言えたらいいなって。
私自身がそういう言葉ではあまり救われないんですよ。「君には翼がある」とか、「無限の可能性がある」とか。そういう人も居ると思ううんですよね。どんなに素敵な前向きな言葉でも、自分が受け入れがたい時は受け入れなくてもいいと思う。その気持ちをタイトルに込めたんです。
*生きるために必要な救済と再生の物語です。
ひとこと
寺地さんが言う「私自身がそういう言葉ではあまり救われないんですよ」という言葉がとても印象的。正直な方だなぁーと思いました。確かに響く言葉って人ぞれぞれだし、また、許容範囲にしてもみんな同一ではない。みんなが許せても「私」は許せないってことがあって当然。そのあたりのことを、寺地さんはご経験を踏まえ、きめ細やかに描かれているのではないかと感じました。
それでは、また来週。
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