えとせとら本棚

新しい本との出会いにわくわく。一冊の本から次の一冊へ。

【朝日新聞書評】2020年7月25日掲載分ピックアップ

 

 

 

 

毎週土曜日に掲載されている朝日新聞書評欄から、気になったものをピックアップして掲載しています。毎週、幅広いジャンルが紹介されていますが、あくまでも私自身が「気になる」という視点で選んでいます。読書リスト的なページです。

 

今週はどんな本が登場しているのでしょうか?見て行きましょう。

 

 

動き出した時計:小松みゆき

動きだした時計: ベトナム残留日本兵とその家族

動きだした時計: ベトナム残留日本兵とその家族

 

 

 書評は戸邉秀明(東京経済大学教授)さん。

残留兵の子どもと同世代の著者にとり、青年期はベトナム反戦の時代だった。苦学の末、職場で身につけた「調べてまとめる」力が、20代に「思いを寄せた国」で開花する。その軌跡は、戦後民主主義の体験をバネに、冷戦後の日越関係を草の根から変えた民際交流史と言えよう。━━書評一部引用。

 

Amazonより

40歳を過ぎてベトナムに移り住んだ日本語教師の女性と、第2次世界大戦後も帰国せずにベトナムに残った日本兵とその家族たちとの30年におよぶ交流の記録。
著者小松みゆきさんは1992年にハノイに赴任。2001年に認知症となった母親を日本から呼んで同居を開始。その大変だけどちょっと愉快な日々は2015年に松坂慶子さん主演「ベトナムの風に吹かれて」として映画化されました。彼女は新潟の田舎育ち。昭和の貧しくアナーキーな青春時代を駆け抜けてきた魅力的な個性の持ち主です。一方、日本兵たちは戦後ベトナムの抗仏戦争に協力しベトナム人女性と家族を持ちますが、ベトナム政府の方針転換により日本へ単身帰国することになり、残された家族は一転して迫害を受けるようになります。
おたがい社会からはみだした境遇だったから引かれるものがあったのか、その後30年にわたって小松さんは残された家族の相談相手、日本に戻った元兵士たちとの橋渡しを務め、認知症の母も同世代のベトナム人妻たちと仲良くなったりします。それにしても不条理に残されたベトナム人の妻たち、子供たちは、なぜ日本に戻ってしまった夫、父親を恨みもせずに想いつづけるのか。共感、怒り、感動…多くの人に読んでもらいたい1冊です。

 

 なかなか表に出て来ないこういった日本人家族の話。そして、今でもこういった小さな交流があるという事実。同じ日本人であるのに、知らずに生きていることに気づかされ、歯がゆさを感じる。離れ離れで暮らす家族には一体どんな事情があるのだろうか?

 

 

 

2冊目です。

彼女たちの部屋:レティシア・コロンバニ

彼女たちの部屋

彼女たちの部屋

 

 

 

 書評は大矢博子(書評家)さん。

ここにあるのは、本人のせいではない貧困や差別と戦う女性たちを、決してひとりにはしない、決して放ってはおかないという強い連帯だ。百年前の戦いが今につながり、きっと未来へも受け継がれていくのだという力強いメッセージだ。
 辛(つら)い現実の前にうずくまるあなたを、助けたいと願う人がいる。必ずいる。これはそんな希望の物語なのである。━書評一部引用

  

「BOOK」データベースより

現代、パリ。大きな挫折のあと、弁護士のソレーヌはある保護施設で代書人のボランティアをはじめた。「女性会館」というその施設には、暴力や貧困、差別のせいで住居を追われた人々が暮らしている。自分とはまるで異なる境遇にいる居住者たちの思いがけない依頼に、ソレーヌは戸惑った。それでも、一人ひとりと話して、手紙を綴るなかで、ソレーヌと居住者たちの人生は交わっていく。ここで自分の役割を見つけたと思った矢先、事件は起きた。約100年前、パリ。救世軍のブランシュは街中の貧困と闘っていた。路頭に迷うすべての女性と子供が身を寄せられる施設をつくる――彼女の計画は、ついに政治家・財界人も動かしつつあったが……。実在する保護施設と創設者を題材に、時代を超える女性たちの連帯を描く、『三つ編み』の著者による長篇小説。

 

世界的にヒットした「三つ編み」の作者の新刊です。「三つ編み」が良かったのでこちらの作品もと、手にされる方は多いのではないでしょうか。いくつかの物語を並行して走らせる作者の作品。今回は2つの時代を行ったり来たりしながらの女性たちの苦悩を描いた作品です。重く厳しいテーマですが、とにかく読み易いので、海外文学が苦手な方にもおすすめです。

 

 

 

男:幸田文

男 (講談社文芸文庫)

男 (講談社文芸文庫)

  • 作者:幸田 文
  • 発売日: 2020/07/13
  • メディア: 文庫
 

 

 堀部篤史が薦める文庫この新刊!のコーナーに掲載されていました。

 

婦人公論誌上での連載原稿を中心に編まれた幸田文の随筆集。「男」と題されて入るが、そのテーマは「仕事」と読み換えることもできる。━━━━書評一部引用

 

「BOOK」データベースより

「惚れる男がいてくれることは、なんと嬉しいことだ」羅臼の鮭漁、製鉄所、森林伐採、下水処理、ごみ収集、救急医療、橋脚工事―日常の暮らしを支える現場で黙々と働く男性たちに注ぐ、やわらかく細やかな眼差し。現場に分け入り、プロフェッショナルたちと語らい、自身の目で見て体感したことのみを凛とした文章で描く、行動する作家・幸田文の随筆の粋。

 

幸田さんの職業随筆は何本か読んだことがあるが、結構なところまで幸田さんご自身も足を踏み入れ、自分の目で見て文章にされていた。そうそう、本書にも掲載されているみたいですが、マンホールの下に降りていったという話が印象的だった。当時、幸田さん、こういう突撃系のお仕事もされていたんだと、ちょっと驚いた覚えがあります。

 

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今週は、縁の下の力持ち的なお仕事かな。誰かのために寄り添い気持ちを注いでいくというような。様々な形で縁の下から私たちの生活を支えてくれる人々の姿が見られるんじゃないかな?と感じた3冊でした。

 

まだまだコロナの日々が続いています。予定ではオリンピックに沸いている時期だったのに.....と思うとやるせないですね。梅雨もまだまだ明けそうもないし。せめて明るい太陽の光を見たいなぁと思う今日この頃。皆さま、くれぐれもコロナにはお気をつけを。

ということで、今週はここまで。それではまた来週!