えとせとら本棚

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【王様のブランチ】祝!芥川賞・直木賞 受賞作家インタビュー(2023)

 

王様のブランチのBOOKコーナーで紹介された本を紹介します。

今回は第168回芥川賞・直木賞の受賞者の会見コメント及びインタビューです。

まずは芥川賞。受賞直後のお二人にインタビュー。

【芥川賞】この世の喜びよ:井戸川射子

インタビュー

井戸川さんは高校の教師をしながら、2児の母として子育て真っ最中。受賞作執筆のきっかけは、育休中にご自身が書いた別の短編に影響を受けたそう。

 

井戸川さん:

短編で「マイホーム」っていうのを書いた。子育ての辛い部分をぶつけちゃったなぁーみたいな作品。でも、子育てってしんどいことだけではもちろんないし、幸せもたくさんあるのに書けなかった。それで喜びの部分を書いてみようと。

―――二人称で書いていることについて。
井戸川さん:
二人称小説を是非書いてみたいと思っていた。子育て中に、自分が子どもを見守っているように、自分も見守られていたらいいな、心強いのになと思って。

 内容

思い出すことは、世界に出会い直すこと。
最初の小説集『ここはとても速い川』が、キノベス!2022年10位、野間文芸新人賞受賞。注目の新鋭がはなつ、待望の第二小説集。
幼い娘たちとよく一緒に過ごしたショッピングセンター。喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。言葉にならない感情を呼び覚ましていく表題作「この世の喜びよ」をはじめとした作品集。-Amazonより

著者について

1987年生まれ。関西学院大学社会学部卒業。
2018年、第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行。
2019年、同詩集にて第24回中原中也賞を受賞。
2021年、小説集『ここはとても速い川』で第43回野間文芸新人賞受賞。
著書に『する、されるユートピア』(青土社)、『ここはとても速い川』(講談社)、詩集『遠景』(思潮社)がある。━Amazonより

 

 

 

続いて、佐藤厚志さんのインタビュー

【芥川賞】荒地の家族:佐藤厚志

インタビュー

―――震災から12年、このタイミングで震災をテーマにした理由は?

佐藤さん:

10年以上経って見える風景もある。おぼろげになったものと、強烈に残っている感情がある。そういうのがある程度今の段階では俯瞰して見られるようになった。

―――本作で心掛けたこと、大切にしたことは?

佐藤さん:

東日本大震災を受けて書いたので、できるだけ真実を込めて、リアルな描写とか、植木仕事の細かいところに至るまで、描写のひとつひとつに出来るだけウソがないように努めました。

 内容

あの災厄から十年余り、男はその地を彷徨いつづけた。
元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点か――。40歳の植木職人・坂井祐治は、災厄の二年後に妻を病気で喪い、仕事道具もさらわれ苦しい日々を過ごす。地元の友人も、くすぶった境遇には変わりない。誰もが何かを失い、元の生活には決して戻らない。仙台在住の書店員作家が描く、被災地に生きる人々の止むことのない渇きと痛み。(Amazonより)

著者について

1982年宮城県仙台市生まれ。東北学院大学文学部英文学科卒業。仙台市在住、丸善仙台アエル店勤務。2017年第四十九回新潮新人賞を「蛇沼」で受賞。2020年第三回仙台短編文学賞大賞を「境界の円居(まどい)」で受賞。2021年「象の皮膚」が第三十四回三島由紀夫賞候補。━Amazonより

 

 

続いて、直木賞受賞の千早茜さんと小川哲さんの受賞会見直後のインタビュー。

―――今の心境は?

小川さん:早くお酒を飲みに行きたいです。

千早さん:お家に帰って、現実なのかをひとりで噛みしめたい。

【直木賞】地図と拳:小川哲

インタビュー

小川さん:

戦争の話になると「こいつが悪者」「こいつはヒーロー」みたいな考え方をしてしまう。それって結果が出てから言っていること。当時はそれぞれが自分が正しいと思っていた。そこにいた人々も「ヒーロー」「悪者」って判断できなかったと思う。

―――人と人との戦いは続いている、今にも通ずる感情、感じ方かなとも。

 

参考文献が8ページにも及んだそう。

 

佐藤さん:

書く前に読んで書き始めたわけじゃなくて、書いているうちにわからないことがいっぱい出て来る、それを調べていたらそんな冊数になちゃった。ホントに細かいのですが、満州に住んでいた人が、どういう暖の取り方をしていたか、ストーブなのか、薪なのか?ストーブはガスなのか、電気なのか?あるいは灯油なのか?そうすると「ストーブの歴史」みたいな本を読む。調べることは楽しんだ、僕はね。(千早さん:私も楽しい、豆知識が増えていく。)

その時間だけだったらいいのにね(笑)(千早さん:締め切りがこなきゃいいのに)

 内容

「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」
日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。
ひとつの都市が現われ、そして消えた。
日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の名もない都市で繰り広げられる知略と殺戮。日本SF界の新星が放つ、歴史×空想小説。(Amazonより)

著者について

1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年に『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を受賞しデビュー。『ゲームの王国』(2017年)が第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞を受賞。『嘘と正典』(2019年)で第162回直木三十五賞候補となる。(Amazonより)

 

 

【直木賞】しろがねの葉:千早茜

インタビュー

―――主人公のウメさん、強いですね。

千早さん:

強いですね。へとへとになりました。書いてて。

―――執筆のきっかけは10年前石見銀山のガイドさんから聞いた話。

千早さん:

(男の人は)塵肺とかで短命になってしまう。例え話なんですけど、石見の女性は、生涯三回夫を持ったんだよって。データとしては、正しいかわからない。それを聞いた時に、三人も夫を看取る女性の人生ってどんなんだったのだろう?というのがきっかけになった。

 

取材に行ったときに、ウメが走り回った山を自分の足で歩こうと思って、3日間ぐらい山を駆けまわった。同行する編集者の靴が壊れてしまい迷惑をかけた。

 内容

男たちは命を賭して穴を穿つ。山に、私の躰の中に――
戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。
しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。生きることの官能を描き切った新境地にして渾身の大河長篇!-Amazonより

著者について

1979(昭和54)年、北海道生れ。立命館大学卒業。幼少期をザンビアで過ごす。2008(平成20)年、小説すばる新人賞を受賞した『魚神(いおがみ)』でデビュ一。2009年、同作にて泉鏡花文学賞、2013年、『あとかた』で島清恋愛文学賞、2021(令和3)年、『透明な夜の香り』で渡辺淳一文学賞を受賞した。『あとかた』と2014年の『男ともだち』はそれぞれ直木賞候補となる。-新潮社著者プロフィールより

レビュー書いていますので、是非こちらも読んでみてください。www.readingkbird.com

 感想

最近の芥川賞の作品は、ちょっと不思議な読み心地のものが多いといった印象があったのですが、今回は二作ともリアルな感じなのかな?と。直木賞は歴史系ですね。こちらはずっしりとした二作。小川さんの「参考文献が8ページに及んだ」っていうのがすごすぎる。大変な作業だなぁと思ったけど、ご本人はいたって楽しんでいたとのこと。作家にとって好奇心旺盛って部分はかなり大事なんだろうなと感じます。いろいろお話が聴けて良かったです。

皆さま、本当におめでとうございます。今後もますますのご活躍を!