えとせとら本棚

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【王様のブランチ】169回 芥川賞・直木賞 受賞作家インタビュー(2023年7月)

 

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第169回芥川賞・直木賞の受賞者の会見コメント及びインタビューです。

 

まずは芥川賞はこちら。

【芥川賞】ハンチバック:市川沙央

受賞後の記者会見より

市川さん:

芥川賞に重度障碍者が受賞するのは初だと書かれるんでしょうが、どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか、それをみんなに考えてもらいたい。

 内容

本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす――。-Amazonより

著者について

1979年生まれ。神奈川県在住。早稲田大学人間科学部eスクール人間環境科学科卒業。筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側弯症および人工呼吸器使用・電動車椅子当事者。2023年、第128回文學界新人賞受賞。

 

 

 

 

続いて、直木賞受賞の垣根涼介さんと永井紗耶子さんのインタビュー。

【直木賞】極楽征夷大将軍:垣根涼介

 

インタビュー

―――なぜ、足利尊氏に注目したのでしょうか?

 

垣根さん:

教科書では歴史上の偉人ぽく扱われているけれど、僕が資料で読んだ足利尊氏という人は、少なくともプライベートでは偉人ではない。むしろろくでなし。むしろだらしがない。むしろ何も考えていない。ダメな部分が多い尊氏でもどうやって天下をとったのかなという話は、やっぱ面白いのかなと思った。

 

なんで今の時代に「極楽征夷大将軍」を書こうかと思ったか、鎌倉末期から室町創成期もそうで、今の時代も激しく流動している。その中で自分自身の信念を持って生きるとか、それはハードモードの世界に入っている。尊氏みたいなふわふわしている人間が、割と(今の時代でも)生き残っていく気がしている。

 内容

動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。(Amazonより

著者について

1966(昭和41)年長崎県諫早市生れ。筑波大学卒業。2000(平成12)年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。2004年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞と、史上初の3冠受賞に輝く。翌2005年、『君たちに明日はない』で山本周五郎賞を受賞。2023(令和5)年『極楽征夷大将軍』で直木賞を受賞。その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理』『室町無頼』『信長の原理』『涅槃』などがある。(新潮社・著者プロフィールより)

 

 

 

 

【直木賞】木挽町の仇討ち:永井紗耶子

 

インタビュー

―――今思い出しただけでも、込み上げてくるものがあります。

 

永井さん:

そういうこと聞くと、私も込み上げて来る(笑)

 

―――一人がいろいろな人に話を聞く構成なので、自分が話を聞いているみたいな、自分に語り掛けてくれているような気分になった。

 

永井さん:

それはひとつの狙いというか、RPGじゃないですけど、読者が主観で自分の目で見ているような感じで辿っていくことが出来ると、スッと木挽町と言う町に入って行けるのではと思っていたので、そういう風に言っていただけると、ものすごく「やった!」という感じになります。

 

この作品の中にいる人たちは、壁にぶつかったり、迷いがあったり、それでも誰かに助けを求めることで心が楽になって救われることがある。今ある現状から少し離れることが救いになることがあると信じている。楽しんでいただけたらと思います。

 内容

ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顚末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。-Amazonより

著者について

1977年、神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒。新聞記者を経て、フリーランスライターとなり、新聞、雑誌などで幅広く活躍。2010年、「絡繰り心中」で小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。2020年に刊行した『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』は、細谷正充賞、本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞を受賞した。2022年、『女人入眼』が第一六七回直木賞の候補作に。他の著書に『大奥づとめ よろずおつとめ申し候』『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』『横濱王』などがある。-新潮社著者プロフィールより

 

レビュー書いていますので、是非こちらも読んでみてください。

 

www.readingkbird.com

 感想

芥川賞の市川さんの記者会見の言葉は、ずっしりと来るものがありますね。直木賞は、「時代もの」のダブル受賞ということで、結構珍しいパターンなんじゃないかと思います。個人的には「木挽町の仇討ち」の受賞はとても嬉しかったです。本当、これ、面白いですよ!時代小説が苦手な方にもおすすめしちゃいます!!

皆さま、本当におめでとうございます。今後もますますのご活躍を期待してます!