王様のブランチのBOOKコーナーの作家インタビューの内容をまとめています。
[:cotents]
インタビュー
―――イヤミスの女王と言われることについては?
湊さん:
読後、嫌な気持ちになると言ったら感情はひとつですけど、ハッピーエンドじゃないけれどあなたはどう思いますか?という広い意味でのイヤミスと思っていただけたら、ラスト何かあるぞ、そういう読書の一番の楽しみを味わってもらいながら、イヤミスと言う言葉を受け止めてもらえたらいいなと思います。
―――ここで、湊かなえさんの作品を語る上で外せない「湊かなえ・イヤミス作品人気ベスト3」を紹介。ご本人と振り返ります。まずは第3位。
湊さん:
ちょうどTwitter(現、X)を一般の人が使い始めたころで、小説にいち早くこれを取り入れたいなと。Twitterパートと本文があり、表裏を覗くような作品に挑戦した。これを選んでもらえて、挑んでよかったなって思っています。
―――続いて第2位。
湊さん:
究極の愛とはなんだと。他人のことを思って行動したが、ボタンの掛け違いになる。愛ゆえに生じる事件ってことで、私も好きです(笑)
―――そして第一位。
湊さん:
デビュー作が第1位でいいのかな?という気持ちもあるのですが、「告白」が15年間ずっと読んでもらえているから1位になれたんだなっていうことで、やった~!(笑)
―――この物語はとにかくラストが衝撃的。衝撃の稲妻がドーンと。
湊さん:
緻密なプロットを作らずにスタートとゴールを決めて、ゴールが山のてっぺんというイメージ。登山ルートを切り開いていくという形で、最後にどの景色を見たら印象に残るか。読んだ方が驚いたりとか、突き落とされる気持ちになったりとか。
―――見事に突き落とされます。
湊さん:
登って来たところにえ~いって感じでしょ?(笑)
―――そして、最新作「人間標本」
湊さん:
世間に衝撃を与える提示の仕方、、、標本にしてみようかなぁと。
―――蝶って、こんなにいろいろな色が見えるんだって。
湊さん:
そうなんです。明確に色が見えていて、しかも、私たちには一色しか見えないものが、すごく鮮やかな赤に見えていたりとか、それが見えたら世界がもっと鮮やかに見えるのかな?色が溢れすぎて、かえって見えなくなるものもあるのかな?と思って。蝶の見え方に憧れる視点を入れたいなと思いました。
蝶の見え方で同じものを見ていたのに、色が変わって違う色に見えるとか、条件によって変わって見える。1ページめくったら、「あれ、こんな景色だったっけ?」という、ミステリとして面白かったというものを書きたいなと思った。
15周年で蝶という全く知らな世界を書き始めたけど、みんなが見えているものは同じですか?とか、相手も同じものが見えている?とか、自分と同じ基準で判断していませんか?という問いかけが「告白」からやってきたことに通じる。まだまだいろんな形で出来るんだってことを、今回の作品を書きながら思いました。
*人間のこころの闇を描き続け覚醒した湊さんが生み出す驚愕のラストに震えが止まらない1冊です。
ひとこと
湊さん、15周年なんですね。おめでとうございます。新刊が出れば必ず話題になる作家さんとして有名ですよね。新刊はタイトルを見ただけで怖さを感じました。インタビューで拝見した湊さんは、ほんとにおっとりとした優しそうな方。でも作品は真逆っぽいですよね。まさに湊さんの作品そのものかも?なんてことを思いました。それでは、また来週。
湊かなえプロフィール
1973(昭和48)年、広島県生まれ。2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞候補となる。(新潮社・著者プロフィールより)