ニッポン放送あなたとハッピー!2021年7月15日放送分
新潮社の中瀬ゆかりさんが番組内のコーナーで紹介した本と、お話をざっくりまとめて載せていきます。
番組はこちら!radikoでも聴けますよ!
毎回、話題の本が登場!さぁ、今週はどんな本と出合えるでしょうか?
早速見て行きましょう。
神よ憐みたまえ:小池真理子
■著者略歴
1952年、東京生まれ。1989年、「妻の女友達」で日本推理作家協会賞を受賞。以後、1995年『恋』で直木賞、1998年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、2011年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞。『神よ憐れみたまえ』は2010年代に着想し、10年の歳月をかけて紡がれた書下ろし長篇小説である。━━新潮社著者プロフィールより
■内容
ラストの告白に衝撃、落涙必至!10年の歳月をかけて紡がれた別離と再生。
わたしの人生は何度も塗り変えられた。いくつもの死と性とともに──。昭和38年11月、三井三池炭鉱の爆発と国鉄の事故が同じ日に発生し、「魔の土曜日」と言われた夜、12歳の黒沢百々子は何者かに両親を惨殺された。母ゆずりの美貌で、音楽家をめざしていたが、事件が行く手に重く立ちはだかる。黒く歪んだ悪夢、移ろいゆく歳月のなかで運命の歯車が交錯し、動き出す……。━━Amazonより
以下、番組内の話をざっくりと抜粋しています。
中瀬さん:
1100枚にも及ぶ長編です。しかも10年の歳月をかけて書かれたというすごい本。
小池さん自身の10年も、ものすごい波乱っだった。2010年くらいから書き始めたらしいんですけれども、軽井沢の自宅の煙突火災での全焼、翌年はお父様がパーキンソン病を患われていたんですけど亡くなられ、2011年はご自身が転倒して松葉杖生活、歩けなくなっていた時に、お母様の状態も悪く、2013年にお母様の足の壊死が始まって、そして90歳で亡くなる。2018年3月末には、同業のご主人の藤田さんが肺に手術不可能な癌が見つかり、小池さんは看護に奔走されていた。
希望がない中で、書けなくなるんじゃないかって...。しかし、藤田さんの看護以外の時間全てを、未完だったこの作品に注いだ。そういう形で生まれた本なので、この中にも「死と性(生)」、小池さんの分身のようなかたちで投影されているような感じが、読んでいてずっとしていた。ここに込められているものの重厚さとか熱さは、すさまじい年月から来たものであるっていうね。ある種、神が与えた作家としての小池さんへの悲しさであったり、残酷さであったりするんだけど、なにかのギフトがこの中にあるなって気がするんです。
(ここであらすじ紹介)
中瀬さん:
ラストシーンはほんとに涙を禁じ得ない。「小池さん自身も、自分の作品を読んで泣くことってあるんでしょうか?」という問いかけから書いたエッセイがあるんですけれども、この最後の一行読み終えた直後、本当にただならぬ感情に襲われ、身動きできなくなり、嗚咽して、滂沱の涙を流したって...って書いてあった。
知的で冷静でいつも素敵な小池さんのある種の告白なんですけれども、誤解なきよう付け加えると、作品の出来上がりが素晴らしすぎて感動したというよりも、もっと違うことでこれは泣いたんですよね。それは読み終わったときに、おそらく読者の胸に去来するものがそれぞれ違うと思うんです。個人の体験とかにもよって。
何が人を狂わせるのか?何によって人生が狂わされるのか?それを考えさせられます。人生がいろんな形で塗り替えられていく、翻弄される、それは、死であり性であり、生きるってこういうことなんだなっていう、壮絶さと同時に素晴らしさ、そういったいろんなものがこの小説に詰まっている。
何年かに1冊こういう素晴らしい作品に出合うことができるんですけれども、まさにこれがそうであったなと。ものすごく自信を持ってお送りできる1冊です。
***********
<感想>
いやぁ、読む前から言ってはなんですが、今年(年内に読めたら)のマイベスト3になりそうな予感がする一冊ですね。小池さんの集大成的な作品のように感じます。とにかく早く読みたい!けど、じっくり読みたい!と思った次第です。
このコーナーで紹介される本、垣花さんも熊さんも読んでいるんですねぇ。いつもお二人も本の感想を話されます。毎週だから結構大変じゃないですかね?っていうか、中瀬さんの読書量、1か月どれくらいなんだろう。とてもお忙しそうだけど、いつ読んでるんでしょうね。いつか質問してみたです。
それでは、また再来週!
★過去のラジオ棚はこちらです。
*********
中瀬さんはこちらの番組でもエンタメ番付のコーナーをお持ちです。姉妹サイトうずまきぐ~るぐるで紹介してますので、合わせてお楽しみください。
ではまた!