王様のブランチで紹介された作家のインタビューをまとめて掲載しています。
インタビュー
芦沢さん:
どんどん怖さを膨らませるかたちで書いちゃって、思ったより怖くなりました。
5本書いてみたら、全部身近な話になって、嘘に纏わる話が揃ってきた。
―――なんで主人公を元刑事に?
芦沢さん:
過去と現在で明確に事件との向き合い方が変わる立場の人を書きたいなと思って元刑事にしたんですけど、「なんで元刑事にしちゃったんだろう」って。普通に現役の刑事にしていれば、いくらでも事件に勝手に巻き込まれる。でも、停年退職後なので、あれ?事件に巻き込まれないぞ(笑)始まりが苦戦しましたね。
ミステリって誰がやったのか、「Who done it?」あと、どうやったのか「How done it?」があるんですけど、私は主に 「Why done it?」なぜやったの?という人間の心理に興味がありますね。
嫌な人だから嫌なことをする。という話にはしたくなくて、「ああ、、こんなことを....」っていう嫌なことをする話が出て来るんですけど、この人って嫌なことをしたのではなく、善良で思いやりもある普通の、自分だってそうありたいと思う側面がある人が、最悪のタイミングが重なったら、ふと魔が差すことはあるかもしれない。
―――私は読んでいて「まさか、あの人が...」と、絶句しちゃいました。怖かったです。本当に。
芦沢さん:
見える景色が変わる。こういうことだったのか!どんでん返しの瞬間も大事にはしてたんですけど、でもそれだけにしたくないと。そのあとに、その景色が変わったことで、それをどう思うのか、それによって何が変わるのか、余韻というか、考えざるをえなくなる感じにしたいと思いました。
*嘘と向き合ったその先に大きく心を揺さぶられるミステリー小説です。
芦沢央プロフィール
1984(昭和59)年、東京生れ。千葉大学文学部卒業。2012(平成24)年『罪の余白』で野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。2018年『火のないところに煙は』で静岡書店大賞、2021(令和3)年『神の悪手』でほん夕メ文学賞(たくみ部門)、2022年、同書で将棋ペンクラブ大賞優秀賞(文芸部門)、2023年『夜の道標』で日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞。ほかの著書に『許されようとは思いません』『汚れた手をそこで拭かない』などがある。(新潮社・著者プロフィールより)
ひとこと
5つの連作ミステリーだそうです。退職した刑事が、どんな風に事件と向き合うのか、このあたりに現役刑事との違いが出てきそうですね。芹沢さんご自身もどんどん怖さを膨らませて書いていったとのこと。絶句するほどの怖さってどんな感じだろう?是非、読んで確かめてみましょう。それでは、また来週。
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