ニッポン放送あなたとハッピー!2020年11月26日放送分
新潮社の中瀬ゆかりさんが番組内のコーナーで紹介した本と、お話をざっくりまとめて載せていきます。
番組はこちら!radikoでも聴けますよ!
毎回、話題の本が登場!さぁ、今週はどんな本と出合えるでしょうか?
早速見て行きましょう。
影に対して:遠藤周作 母をめぐる物語
■著者略歴
大正12(1923)年、東京に生れる。満州・大蓮、神戸で幼少年期をおくり、カトリックの洗礼を受けた。慶応義塾大学文学部在学中より文学活動を始め、フランス留学後の昭和30年、「白い人」で第33回芥川賞を受ける。以後、「海と毒薬」「沈黙」「侍」「スキャンダル」と次々に問題作を発表する一方、“狐狸庵シリーズ”と呼ばれるユーモア小説・エッセイで多くの読者をつかむ。平成5年、遠藤文学の集大成ともいえる「深い河」を上梓。平成7年、文化勲章を受ける。━「 BOOK著者紹介情報」より
■内容
完成しながらも発表されず、手許に残された「影に対して」。「理由が何であれ、母を裏切り見棄てた事実には変りはない」しかし『沈黙』『深い河』などの登場人物が、ついにキリストを棄てられなかったように、真に母を棄て、母と別れられる者などいない―。かつて暮した街を訪ね(「六日間の旅行」「初恋」)、破戒した神父を思い(「影法師」)、かくれキリシタンの里を歩きながら、(「母なるもの」)、失われた“母”と還るべき場所を求め、長い歳月をかけて執筆されて全七篇。━「BOOK」データベースより
中瀬さん:
今年発見された未発表の中編小説「影に対して」というのがあるんですね。これは長崎市の遠藤周作文学館で見つかったんですけど、原稿用紙の裏面に小さな字いっぱいの自筆の草稿が2枚あったのと、秘書の方が清書した104枚の原稿用紙を文学館の学芸員の方が発見、遺族から寄託されていた三万一千点の資料に含まれていたということで、大発見になった。あの三田文学が増刷したって話題になったくらいのもの。
遠藤文学の中で「母もの」、母の影って言うのは、非常に大きなテーマになっていて、遠藤さんの文学の中にずっと見え隠れしているし、「捨てる」というのも遠藤文学の重要なキーワードになっている。ただ、この主題としてまとめたものは本としてはないんですけど、今回「影に対して」が見つかったことで、母への思いを綴った遠藤文学を全7篇(未発表を含む)収録した短編集ができた。母を捨てて来たことの彼の罪悪感みたいなものがそこから滲み出てきている。
(ここであらすじ紹介。遠藤周作の生い立ちと、主人公・勝呂の話を重ね合わせながら、家族事情などを紹介。)
中瀬さん:
遠藤周作における文学に母というものがどんだけ必要なものだったか。この一冊を読めば、遠藤文学と母の関係がばっちり解ってしまうと言う、ファンにも、これまで遠藤さんを読んだことがなかった人にも、是非読んでいただきたい。
決して出来が悪いのでもないのに、なにか躊躇うものがあって、でも捨てることもなく置いてあったってことはそういうことですよね。
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<感想>
遠藤周作の本は母親との関係がかなり影響されていたんですね。どのような想いがあったのか、今となっては知ることが出来ませんが、こうして残された作品が読めるのは、ありがたいことです。でも、遠藤氏はこの作品を世に出したかったか?と考えると、ちょっと複雑な気にもなります。
話は変わりますが、装丁、素敵ですね。一瞬、新潮クレスト・ブックスの本かと思いました。
次に遠藤文学を読む時には迷わずこの1冊を読みたいと思います。
次回のブックソムリエは12月10日。来週はお休みだそうです。それでは、また再来週!
★過去のラジオ棚はこちらです。
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中瀬さんはTOKYOMXTVの5時に夢中!でもエンタメ番付のコーナーをお持ちで、そちらで紹介された本や映画も、姉妹サイトうずまきぐ~るぐるで紹介してますので、合わせてお楽しみください。
ではまた!