ニッポン放送あなたとハッピー!2021年3月4日放送分
新潮社の中瀬ゆかりさんが番組内のコーナーで紹介した本と、お話をざっくりまとめて載せていきます。
番組はこちら!radikoでも聴けますよ!
毎回、話題の本が登場!さぁ、今週はどんな本と出合えるでしょうか?
早速見て行きましょう。
ジャックポット:筒井康隆
■著者略歴
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。
1960年、弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載される。1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。━Amazonより
■内容
嗤え、歌え、踊れ、狂え。今日も世界中が〈大当たり(ジャックポット)〉! 読者の度肝を抜く超=私小説的短篇集。
コロナ禍、 戦争、 ジャズ、 映画、 文学、嫌=民主主義、 そして息子の死――。かつてなく「筒井康隆の成り立ち方」を明かす最前衛にして超弩級の〈私小説〉爆誕! 亡き息子との〈再会〉を描いた感動の話題作「川のほとり」収録。━━Amazonより
中瀬さん:
筒井先生86歳です。だけどこの若々しさ、日本語を切り開き続けてどこまでも言葉の洪水で我々を飲み込んでくれる、こういう作家は筒井先生が代表的な方なんですね。筒井康隆をずっと読んで来た人にはこの健在ぶりはたまらないし、逆に筒井康隆を読んだことがないんだよねって人が、(筒井氏が)いかにすごいか、入門するにはぴったりなのが、この「ジャックポット」です。
わたしが好きなのは、「縁側の人」っていうちょっと「恍惚の人」っぽいタイトルなんですけれども、頭がぼんやりしてきたおじいさまが、縁側で「雨にも負けず」とか読み出すんですけど、それを「恍惚の人」風にパロディにしているんですよね。だんだん自分がわからなくなっていくっていう話なんですけど、それはもうほんと抱腹絶倒でちょっと笑いながら涙を流す.....っていうような、なかなか活字でそこまで笑わせてくれるものはないんですけど。
それと「ジャックポット」はコロナを扱っているんですけれども、ことわざでコメディにしている。どんどんどんどん、次から次へとパロディが続く。もう癖になるって言うか、自分でも作りたくなるくらい、その言葉に飲み込まれていく。他にもジャズや映画、戦争、文学、様々なジャンルのものにチャレンジして、どれ一つとして飽きさせないものなんですが、最後にこの作品1本だけ全く毛色の違う作品が収録されている。
それは、「川のほとり」というタイトルなんです。これはあらゆる文学関係者が泣いたと言われ、評判になった作品なんです。去年の2月に筒井先生は画家をされていた一人息子を食道がんで亡くされているんですね。51歳で。素晴らしい画家でと蜜蝋という手法で絵を描いていらっしゃったんですけど、筒井先生とコラボもされていたこともあって、その画風とかも覚えている方もいらっしゃると思う。今回の装丁も息子さんの作品。
物語は夢のなかでのことなんですよ。(ここであらすじ紹介)
本当に短い作品なんですけど、私は息子さんとも面識があったといこともあるんですけど、筒井康隆氏からこの原稿が私宛に編集部に送られてきて。先生は原稿用紙にPC打ち出す形で出て来る原稿なんですけど、本当にその原稿用紙に涙のあとを幾つも付けてしまった。読みながら本当止まらなくなって...という作品でした。
これはわたしが先生にお願いして作品集に是非収めさせて欲しいということで入れてもらい、すごく思い入れがあるんです。筒井先生っていうのは私小説を絶対書かないできたんですけど、86歳にして初めて「超私小説」ものを書かれたんだなぁと。
この歳でまたさらに筒井康隆ワールドはどこへ行くのだろう?と、読者にも期待させてしまうというスゴイ短編集がまた生まれました。ずっと疾走するような言葉の洪水を読んだ後に、最後ストンとこの作品に辿り着く感じ。読者も一緒に「川のほとり」に一緒に佇むような感じ、余韻を残した、なんていうのかな、、こんな短編集の余韻ってないなといった作品です。
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<感想>
今日の本は5時に夢中でも紹介されていました。なるほど、中瀬さんとこの作品の出会いは、かなり深いいきさつがあったのですね。筒井作品は10代のころ読んだきりになっていますが、これは久しぶりに読んでみたいなぁと思わされました。早速チェックしてみます。
来週は中瀬さんはお休み、次回は3月18日だそうです。
★過去のラジオ棚はこちらです。
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中瀬さんはTOKYOMXTVの5時に夢中!でもエンタメ番付のコーナーをお持ちで、そちらで紹介された本や映画も、姉妹サイトうずまきぐ~るぐるで紹介してますので、合わせてお楽しみください。
ではまた!