えとせとら本棚

新しい本との出会いにわくわく。一冊の本から次の一冊へ。

【新聞】新たなる恩田陸ワールド「灰の劇場」(朝日新聞:2021年5月1日掲載)

 

 

毎週土曜日に掲載されている朝日新聞書評欄から、気になったものをピックアップして掲載しています。毎週、幅広いジャンルが紹介されていますが、あくまでも私自身が「気になる」という視点で選んでいます。読書リスト的なページです。

 

 灰の劇場:恩田陸

 

 

今週は「読書」のコーナーからピックアップしました。

 

〈それは、ごくごく短い記事だった〉〈年配の女性二人が、一緒に橋の上から飛び降りて自殺したという記事である〉〈どうしてその記事が目に留まったのかは、今でもよく分からない。けれど、目に記事のほうから飛び込んできたという感じで、すごくショックを受けたのを覚えている〉〈この記事が私の「棘」になった〉━━週刊ポストネット記事より

 

とても小さい記事だったけれども、心にずっと残るような事件があったりする。恩田さんにとってずっと心の中に刺さっていた棘のような事件が、この作品を書かせることになったと言う。

 

このニュース、今見ても不可解な感じがしますよね。凡人でも「なんでだろう?」って少しは推理してみますが、名前も顔も知らない、ましてや事件の背景すらも解らない二人のことをひとつの作品として描いてしまうところが、やはり作家さんのすごいところ。

 

恩田さんはなぜこの小さな事件に目を留め、ぞれがずっと「棘」となって残っていたのか。その時々に目に留まるものには何か意味があると聞いたことがあるけど、恩田さんにとってまさにこの小さな記事がそれであり、20年以上の時を経て、その答えが出た作品でもあるのだろう。

 

内容を読んで、私自身もこの作品が気になりはじめた。どんな形で話が展開していくのか、とても興味がある。


■内容

大学の同級生の二人の女性は一緒に住み、そして、一緒に飛び降りた――。
いま、「三面記事」から「物語」がはじまる。
きっかけは「私」が小説家としてデビューした頃に遡る。それは、ごくごく短い記事だった。
一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたというものである。様々な「なぜ」が「私」の脳裏を駆け巡る。しかし当時、「私」は記事を切り取っておかなかった。そしてその記事は、「私」の中でずっと「棘」として刺さったままとなっていた。ある日「私」は、担当編集者から一枚のプリントを渡される。「見つかりました」――彼が差し出してきたのは、一九九四年九月二十五日(朝刊)の新聞記事のコピー。ずっと記憶の中にだけあった記事……記号の二人。次第に「私の日常」は、二人の女性の「人生」に侵食されていく。
新たなる恩田陸ワールド、開幕!━━Amazonより

 

灰の劇場

灰の劇場

  • 作者:恩田陸
  • 発売日: 2021/02/16
  • メディア: 単行本
 

 

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<< 後記>>

 前回ちょっとだけリニューアルしたこのコーナー。その記事を誤って削除しちゃいました。使い慣れているはずなのに、こういうミスは尽きません。トホホ。 ということで、気持ちを新たに、しれっと5月からちょっとだけリニューアル。

 さてさて、あっという間に5月。カレンダーをめくる時の驚きったら!今年もなんとなくメリハリのない前半。まぁ、仕方ない。こうしている間も、コロナと戦っている患者と医療関係者の方たちが過酷な状況下にいると思えば、家でいつも通りの生活が出来ていることにもっと感謝せねばと思う今日この頃。遊びに行けないとか、自粛ストレスとか自分本位なことは言っていられないと思うのです。

 とは言え、政府から聞こえて来るニュースはどれも腹立たしいものばかり。どうしてこうも民意と逆のことをしようとするのか、本当に理解不能。オリンピックが本気で出来ると思っているのか?この時期に看護師500人が本気で集まると思っているのか?どうしたらそんな発想が生まれるのか。まるでコロナがないような世界に生きているとしか言いようがない。ということで、モヤモヤは相変わらずな5月がスタートです。

 それでは、また来週!