えとせとら本棚

新しい本との出会いにわくわく。一冊の本から次の一冊へ。

【ラジオ】<中瀬ゆかりのブックソムリエ>九十歳のラブレター:加藤秀俊 2021年8月26日放送 

 

ニッポン放送あなたとハッピー!2021年8月26日放送分

 

新潮社の中瀬ゆかりさんが番組内のコーナーで紹介した本と、お話をざっくりまとめて載せていきます。

 

 番組はこちら!radikoでも聴けますよ!

 

毎回、話題の本が登場!さぁ、今週はどんな本と出合えるでしょうか?

早速見て行きましょう。 

九十歳のラブレター:加藤秀俊

 

■著者略歴

1930年、東京渋谷生まれ。社会学博士。一橋大学卒業。京都大学、スタンフォード大学、ハワイ大学、学習院大学などで教鞭をとる。その後、国際交流基金日本語国際センター所長、日本育英会会長などをつとめる。また梅棹忠夫、小松左京らと「未来学研究会」を結成し、大阪万博のブレーンともなった。『加藤秀俊著作集(全12巻)』『アメリカの小さな町から』『暮しの思想』『メディアの発生 聖と俗をむすぶもの』『わが師わが友』など著書多数。訳書にリースマン『孤独な群衆』、ウォルフェンスタイン&ライツ『映画の心理学』(加藤隆江との共訳)などがある。━━新潮社著者プロフィールより

 

内容

あなたのいない毎日に、ぼくは慣れることができない。ある朝、あなたは突然逝った――。小学校の同級生であったあなたと結婚して六十余年、戦争体験、戦後間もなくのアメリカでの新婚生活、京都での家作り、世界中への旅、お互いの老化……たくさんの〈人生の物語〉を共有してきたあなたの死で、ぼくの人生は根底から変わってしまった。老碩学が慟哭を抑えて綴る愛惜の賦。━━Amazonより

 

以下、番組内の話をざっくりと抜粋しています。

 

中瀬さん:

  加藤さんは本をたくさん書かれている。この新刊は、加藤さんと亡くなった奥様との、およそ80年にもおよぶ人生の旅路を綴った一冊。

 

二人は小学校の同級生。そのころは好きとかそういう関係でではなかったんですけど、戦後、駅のホームで再会する。大学生の時です。そこから交際が始まって、1953年のデモで彼女の手を握って、手を取って逃げた。ドラマチック、映画のワンシーンみたいなんですけど、二人の歴史が始まる。

 

朝、寝室に行って呼びかけに答えがない。奥様は突然お亡くなりになっていた。普通に続いていた幸せな日常がすとんと幕を閉じる。さよならも言わずに一人で逝ってしまった。その喪失感の中、想い出を書くことによって、亡くなった奥様を取り戻すかのように想い出がずーーと綴られている。

 

 

中瀬さん:

 一人称は「僕」で、よびかけは「あなた」。素敵なご夫婦で、こんな風に年を取ってともに白髪じゃないですけどいけたらどんなに素晴らしんだろう...って思うことが展開されています。

 

(ここでエピソードを少し紹介)

 

中瀬さん:

  なんか瑞々しいんですよね。90でも大学生のときも、この人たちは変わっていないんですよ。見た目はお年を召してますが、少年と少女がそのまますごくお互いが好きで...。それが伝わって来て、伝わって来て。劇的に取り乱したりしてることが一つも書かれていなくて、ある意味淡々と描かれているんですけど、それが余計に愛おしさ、っていうか、変わらずまだ彼女がそこにいる。まだ奥様が一緒にいるっていう感じがすごい伝わってくる。

 

私なんかやっぱり同じようにパートナーを亡くしている。年は全然違いますけど、この喪失感は凄くわかる。ずっと目を潤ませながら読んでしまいました。

 

(ここでカッキー&中瀬さんのお気に入り部分の朗読)

 

中瀬さん:

こんなに素敵に人生を謳歌されて、こんだけ瑞々しい感性でこの文章を綴られた。素敵な人生の指南書でもあると思います。

 

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<感想>

途中垣花さんの朗読が入りましたが、思わずPCを打つ手が止まってしまうほど、なんか本当に映画のワンシーンでした。何年経っても記憶に残る場面はずっと色褪せない。中瀬さんの言う瑞々しさというのが、ほんの少しの朗読からも感じ取ることができました。パートナーを見送ることはどういうことなのか。本書から感じ得るものは大きそうです。

来週は中瀬さんはお休みだそうです。それでは、また再来週!

 

★過去のラジオ棚はこちらです。

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中瀬さんはこちらの番組でもエンタメ番付のコーナーをお持ちです。姉妹サイトうずまきぐ~るぐるで紹介してますので、合わせてお楽しみください。

ではまた!